ちょっといい話『クリスマスプレゼントに託された本当の願いとは?』志賀内泰弘

敬愛する友人、木下晴弘さんの新刊「ココロでわかれば、人は“本気”で走り出す!」(ごま書房新社)が出ました。待望と言ってもいい、「伝説」の名著のリメイク版です。志賀内が初めて木下さんの講演を拝聴した時、心震えた話があります。

◆「ココロでわかれば、人は“本気”で走り出す!」木下晴弘(著)
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今日は、新刊の中から、そのエピソードの全編を紹介させていただきます。これは、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動の「ちょっといい話」としても、ぴったりのお話です。

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「クリスマスプレゼントに託された本当の願いとは?」

クレームの話になると、クリスマスに起こったある出来事を思い出す。今ではもう社会人になった我が子が、まだ幼稚園に通っていたときのことだ。

我が家では、子どもたちが小さい間は、彼らの夢を大切に育むことを第一義に考えていた。夢というのは空想の世界である。空想する力とは、見えないものを見ようとする力につながる。

急に現実的になって申し訳ないが、数学で立体切断の問題などは、目に見えないものを想像できる力の有無が得点を左右する。だから、決して私がロマンチストだからという理由ではない。というわけで、クリスマスに届くプレゼントはサンタからのプレゼントであることが重要で、決して親からの贈り物であることがばれないよう慎重に事を運んでいた。

その年、息子には戦隊ヒーローモノのロボット、娘には子ども用コンピュータという人気のあるオモチャをプレゼントすることになった。イブの夜、そのプレゼントを枕元に置き、私と妻は彼らが翌朝、どんなに喜んでくれるかと想像をふくらませた。もちろん結果は大成功。目を覚ましてプレゼントを発見した子どもたちは大喜びし、作戦は大成功と喜んだ。

ところが良かったのはそこまで。ロボットはいいのだが、娘の子ども用コンピュータが動かない。何度も電源を入れ直してみても機械がウンともスンともいわないのである。さっそく買った玩具店Aに、こっそり電話を入れることにした。すると電話に出てきた責任者なる人物はこう答えた。

「ああ、子ども用コンピュータですね。それは私ども販売店の責任外なので、すみませんがメーカーに直接話してもらえないでしょうか」

メーカーはB社である。売った店の責任は感じないのかと不満ながらも、告げられた電話番号にかけてみた。ところが何度電話しても話し中でつながらない。それこそ一五分刻みほどの短いインターバルで、夕方前まで繰り返しかけてもダメだった。

一度、試してみるとよくおわかりになると思うが、得てしてメーカーのクレーム受付窓口というのはつながりにくい。その上、二五日のクリスマスということが災いした。娘は泣き出してしまい、母親から「我慢しなさい!」と叱られる騒ぎとなった。 しかたなくもう一度、玩具店Aに電話した。今日中にどうにかしたくてワラをもつかむ心境である。

すると電話口に同じ責任者が出た。そこでフッと私にある思いが浮かび、こう切り出した。

「お忙しいところ、修理だなんだと言いだしてすみません。木下と申します」
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

ここまではお互い、まあ儀礼的な挨拶である。しかし恐縮した言葉の奧で、相手は再び電話してきた私がどんな要求を言い出すか身構えていたに違いない。そこで私は言った。

「メーカーさんの窓口ですが、今までお電話してみましたがつながりませんでした。でも、もう修理とかはいいんです」
「はあ?」
まさかの言葉に相手は思わず拍子抜けした声を上げたが私は続けた。

「お電話したのは、ひとつだけあなたにお伝えしたいことがあったからなんです。私があなたの店で買ったもの、それは何だかおわかりですか?」
「はあ……」

相手にすればますますわけがわからない。ここからが私の本意なのだ。

「現実には存在するはずのないサンタの国が子どもたちの心のなかにあります。子どもたちはサンタクロースがいると信じながら、一方では本当にサンタはいるのか、本当にプレゼントを持ってきてくれるのかと不安も抱きつつ、イブの夜はサンタが来るのを見届けようと夜更かしして待ち続けます。でも睡魔には勝てず、彼らはついにサンタに会うことはできないのですが、翌朝、枕元にプレゼントを発見して喜びます。
プレゼントというモノを手にしたからだけではありません。ああサンタは本当にいたんだ、サンタの国は本当にあったんだと確信できたからです。信じることができれば心を思いきり夢の世界に遊ばせることができます。その夢と感動を私は買ったんです。オモチャというモノを買ったのではありません。どうかそれだけはわかってほしい。それが伝えたかったことです」

オモチャは「現象」であり、「本質」は別のところにある。その「本質」を知ってもらいたくて、だから思いを込めて話した。すると沈黙が続いたあと、ひと言相手が言った。

「少しだけ私に時間をください」

◇想像をはるかに超えた届けもの

「はあ?」
今度は私が戸惑いの声を上げた。彼は言った。

「お買い上げの品は超人気商品で、お取り替えしようにもウチの店には在庫がありません。しかしほかにも支店があるので、問い合わせしてみます。探せば一つくらいは見つかるかもしれません。できれば今日中にお宅へお届けしたいと思います」

木に竹を接いだような最初の受け答えとは打って変わり、まるで奇跡ではないか。思いもよらない言葉に私は驚き、思わず「無理はしないでくださいね」と言った。実はその好意だけでも胸にグッときた。

四時間ほどたった夜の九時頃である。うまく見つかるかどうか不安な気持ちで待っていると、玄関のチャイムが鳴った。 「来た!」急いでドアを開けたところ、確かにコンピュータの箱をわきに抱えた責任者の方が立っていた。驚いたのはその姿だ。私は漠然とスーツ姿を想像していたのだが、なんと彼は上から下まで真っ赤な服を着ていた。

「えっ、サンタ?」
サンタクロースそのものだったのである。思わず間の抜けた声を発した私に彼は言った。
「はい、サンタが来ました。お子さんを呼んでください」
「わっ、サンタだ」
すでにパジャマを着て寝支度を始めていた子どもたちは喜び、サンタの周りを飛び跳ねた。サンタはひざを折ってしゃがみ込み、娘にプレゼントを手渡しながら謝った。

「ごめんね、サンタのおじさんは忙しくてね、壊れたプレゼントを持って来ちゃった。これはちゃんと動くよ。おりこうにしてたら来年もまた来るからね」

子どもたちを部屋に帰したあと私は言った。

「よくぞ子どもたちの夢をつないでくれました。こんな格好までして、お恥ずかしかったのではないですか?」

すると彼は首を大きく横に振った。

「いいえ。先ほど木下さんが言われた、売っているのはオモチャではない、夢と感動であるという言葉、実はそれこそが我が社の理念なんです。忙しさにかまけてすっかり忘れてしまっていたんです。申し訳ありませんでした」

こう言って私の前で泣いたのである。私ももらい泣きし、こう言った。

「こんな素晴らしいクレーム対応を受けたのは初めてです。私は今後、どんなことがあっても、あなたのお店でオモチャを買いたいと思います。ありがとうございました」

ついさっきまで、二度とこの店では買わないと思っていた私は、このクレーム対応を受けてすっかりファンになってしまった。 彼は「本質」を見抜くことで、サンタの服で届けるという「現象」を生み出した。いつもこんなにうまく事が運ぶわけではないだろう。

しかし、もしあなたが相手にクレームを伝えたいと思った時、少し立ち止まってどんなアプローチをとるのが最適かを考えてほしい。自分が望む「本質」は何なのか? それをどう伝えると効果的なのか?  感動はたまにこんな奇跡を呼び、それがまた感動を紡ぎ出していく。

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