『楽しむことが成功の近道』|ちょっといい話 志賀内泰弘

自己啓発の本に、よくこんなことが書かれています。
 
「迷ったら、楽しい方を選びなさい」

私も多いに同感します。でも、ちょっぴり、「本当にそれで大丈夫なんだろうか」という疑いの気持ちも抱いて来ました。

何か大きなことを成すには、我慢や辛抱が必要。なのに、ただ「楽しい」ほうばかりを選んでいたら、人間がダメになってしまうのではないかとも思うのです。

でも、一方、「好きこそものの上手なれ」という諺があります。好きということは、やっていて楽しいということ。楽しいからこそ、ものごとは続けられるのであって、その先に「上手」、つまり成功があるわけですね。

しかし、「楽しい」ほうばかりを選んで生きてきた結果、上手くいかなくて、ついには貧困に陥った人を何人も知っています。

さて、大谷翔平がア・リーグでМVPを獲った2021年の翌春3月に放送された、NHKスペシャル「大谷翔平 2018ー2021 知られざる進化の軌跡」を観ていたときのことです。

エンジェルスのジョー・マッドン監督が、こんなことを言うのが耳に留まりました。

「楽しむことがどれほど成功の近道になるかを軽視してはいけません」

2020年までは、日本ハム時代と同様に、「大谷ルール」というものが存在していました。登板日前後の両日は、野手(打者)として出場させないという起用方法です。

それは、大谷の身体を慮り、投手と野手の二刀流が負担にならないよう配慮したものでした。ところが、2021年に就任した新GMは、そんな「大谷ルール」を撤廃、起用法の制限を完全に取り払ったのです。それによって、投打同時出場のリアル二刀流や、登板日前後のDH出場が可能になりました。

その結果、大谷は投打ともに大活躍をしたのです。

マッドン監督は言います。

「ショウヘイのタフさは本当にすごいが、何より彼はいつも笑顔だ。プレーする純粋な楽しさが、彼を疲れなくさせていた。

野球は遊びだ。メジャーリーグでは、生きるか死ぬかの戦いだと思っている選手が多いが、そうではない。内なる楽しさや喜びがなければ気が重くなり、何かに押しつぶされてしまう。

楽しむ力を甘く見てはいけない。彼は純粋にプレーを楽しみ、野球が遊びだということを正しく理解している。彼のようにプレーを楽しむ選手が増えてほしい」

大谷は、2018年10月、右肘の内側側副靱帯(じんたい)再建手術を受けました。通称トミー・ジョン手術です。番組では、手術後のリハビリトレーニングの様子も映していました。

トレーナーが大谷の腕を取って、グイッと曲げます。その度に、大谷の顔が苦しそうにゆがむのです。その様子は目を背けたくなるほど辛そうに見えました。

「楽しむ」ことに秘められたパワーはすごいものがあります。でも、でも、肝心なことを忘れてはならないのです。大谷がどれほど身体を鍛え、練習に打ち込み、体調管理に気を配っているかを。

つまり、「楽しむ」ことと、あくなき努力を続ける「苦しみ」とは、ワンセットなのですね。

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