『GoodはGreatの敵である』|ちょっといい話 志賀内泰弘

経営コンサルタントの小宮一慶さんの講演を拝聴しました。
演題は、「成功するリーダーの条件」です。

「成功している人の5つの特徴」を、一つずつ丁寧に説明されたあと、オマケとして6つ目の「成功している人の特徴」を語られました。
それは・・・「もう一歩踏み込むこと」だそうです。

人は、そこそこ成功すると、ついつい、
「ここまで来たからまあいいや」
とか、
「これくらいで充分」
と、思いがちだといいます。

そこで、小宮さんの教えです。成功している人は、もう一歩踏み込んでいる。
「GoodはGreatの敵である」
と、思って行動しているというのです。

なるほど!
思わず頷いてしまいました。
実は、私は、いま「Good」と闘っている最中だからです。

3年前、「京都祇園もも吉庵のあまから帖」(PHP文藝文庫)の第1巻が発売になりました。それまで、小説は何冊も書いてきましたが、それはビジネスや自己啓発のジャンルのものでした。それが、初めて「文芸」のジャンルでデビューできたのです。

なんとか、頑張って、シリーズ化できたらいいなあ~と思って書き始めました。第3巻の発売が決まった頃、そのシリーズ化の夢もかなったと、嬉しくなりました。

なんとか、みなさんに読んでいただいて、第5巻くらいまでいったらいいなあ~と願っていました。それが、2022年6月にかない、第5巻が発売になりました。

来春1月には、第6巻が発売になる予定です。さらに、第7巻の原稿を「PHP」増刊号で連載中です。夢がかなった。願いが一つひとつ実現していく。

でも、その都度、嬉しくてはしゃぐどころか、苦しくてたまらなくなるのです。というのは、読者のみなさんから期待に応えなくてはならず、ましてや裏切るようなものは書けないからです。

私がいつもカフェに出掛ける時に持ち歩いている創作ノートの表紙に、マジックでこんなことを書いてあります。
「あきらめない」
「妥協しない」
「もっともっと良くなる」
「辛抱する」
「がまんする」
「もういいか、と思った向こうにいいアイデアがある」
「もう一歩、考える」

第1巻の頃は、
「うん、なかなかいいストーリーだなぁ。俺は天才かもしれん」
などと、酔いしれて構想していました。
それが、第3巻くらいから、
「本当にこれでいいのだろうか」
と、迷いが出て来たのです。

小説を書くのに、規則や決まりはありません。あくまでイメージ的な言い方ですが、自分が裁判官であり法律なのです。
「これくらいでいいかな」
と、いつでも、考えるのを停止することはできます。
そこをグッと堪えて、
「もっともっと面白いラストシーンにできないだろうか」
と考え続けるようになりました。

そうなんです。
小宮さんの言う、「GoodはGreatの敵である」なのです。

すると、第4巻から読者の反応が如実に変化したのです。
「第3巻までも、もちろん面白かったけど、今回は格段に面白くなりました。次が楽しみです」
という声が、増えたのです。

となると、著者としては、安閑としてはいられません。もっともっと、面白くしよう。

これでいいのか?まだまだいいアイデアが出るんじゃないか?
と、自分の中にいる「妥協」という敵と戦わなくてはならなくなるのです。

実は・・・それはメチャクチャ苦しいのです。無制限に時間があれば、きっとずっと考え続けていることでしょう。

でも、「締め切り」がある。発売日を遅らせるわけにはいかない。だから、アイデアがなかなか出で来ないと、のたうち回って悶えます。

家の中で、よく「ア~」と声を上げます。カフェでは、髪をかきむしります。散歩中、ずっとブツブツ言っている(らしい)。

でも、でも、苦しいけれど、楽しいのです。悶えている時は、辛くてたまらないけれど、パッとひらめいた瞬間、何にも代えがたい喜びが沸き上がるのです。

とても、まだまだ「成功」にはほど遠いけれど、
「GoodはGreatの敵である」
という言葉を、心に強く刻んで書き続けたいと思うのです。

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