ちょっといい話『人にしてもらって嬉しいから』志賀内泰弘

志賀内は、「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動の代表を務めて15年になります。かといって、もちろんのこと「親切」や「気遣い」「気配り」の達人ではありません。目の不自由な人、なんだか道に迷っていそうな人には声掛けします。道端の空き缶も拾います。できるかぎり、募金もします。でも、恥ずかしながら、ある時まで、ズボッと抜けていたことがありました。

車を運転していると、よくこんなことがあります。わき道から幹線に出ようとすると、渋滞。信号が青に変わったというのに、ノロノロとしか進みません。誰もがイライラしているのでしょう。一台も割り込ませてくれません。

そんなとき、一台のトラックが、パッシングして入れてくれました。運転席のドライバーさんに、右手を挙げて、
「ありがとう!」
合図を送ります。すると、相手も、
「なんのなんの」
という顔つきで、左手を上げて返してくれました。

なんとも爽やかに一瞬です。でも、志賀内は、ここで終わってしまっていたのです。

ある時、その反対の立場のことがありました。渋滞の一車線の道路をノロノロと走っていると、高級車が左折のウインカーを出して、止まっていました。フロントガラス越しに、若い男性の顔が見えました。大学生くらいでしょうか。

志賀内の三台前の車まで、割り込ませようとせず、それどころか「割り込ませるものか」という雰囲気で、車間を狭めてノロノロ進んでいました。一台前の車に、若い男性がペコリとお辞儀するのが見えました。でも、入れてはもらえませんでした。たぶん、前の車のドライバーは、目を合わせないようにしていたのでしょう。目を合わせてしまったら・・・。

なんとなくわかるような気がしました。高級車の若者。それが人間の「性(さが)」なんでしょうね。

志賀内も急いではいましたが、左手で、「どうぞ」というポーズをして、入れてあげました。すると、よほど嬉しかったのか、若い男性は、ペコペコとこちらにお辞儀をして、なんとも申し訳なさそうな顔をしました。

さて、その後です。割り込んだあと、ハザードランプをチカッチカッと二度、点灯しました。ほんの少し間をおいて、ふたたび、チカチカッ。さらに、もう一度、チカチカッ。

それを見て、心の中がポッと暖かくなりました。一度目のチカチカッは、「ありがとうございます」。二度目のチカチカッは、「本当に助かりました」。三度目は、もう一度「ありがとうございます」。というように勝手に思えたのです。

ここで、はたと我に返りました。まだ渋滞が続いています。自分は、道を譲ってもらった時、ハザードランプを点滅して、「ありがとう」と伝えていただろうかと。ああ、恥ずかしい。手を相手に向かって、「ありがとう」と合図は送るけれど、ハザードランプをチカチカッとさせることはしていませんでした。

それ以来、割り込ませてもらうと、待ってました!と言わんばかりに、チカチカッとさせるようになりました。

なぜなら・・・。自分がしてもらって、メチャクチャ嬉しかったからです。自分がしてもらって嬉しいことを、他人にもする。世の中って、たったそれだけで、住みやすくなるのではないか。

小さな小さな「親切」をグルグル回す。「プチ紳士・プチ淑女を探せ!」運動は、ほそぼそだけど続きます。

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