ほろほろ通信『押入れの麦わら帽子』志賀内泰弘

名古屋市天白区の藤城加恵子さん(74)の家の押入れには、リボンが付いた麦わら帽子が大切にしまってある。ときどきそれを眺めては温かな気持ちになるという。

3年前の9月23日のこと。帰宅した中学生のお孫さんが「お兄ちゃんが近くの道路でアルバイトをしていた」と報告に来た。見に行くと、マンションの道案内の看板を持って舗道にじっと座っていた。残暑厳しい日で、汗だく。ずっと野球部だったお孫さんは「炎天下での練習は慣れているから」と帽子もかぶっていなかった。

お孫さんは帰ってくるなり、麦わら帽子を差し出して話し始めた。通りがかりの知らないおばさんに「まあまあ、この暑いのに大丈夫?」言われ、自分がかぶっていた帽子をお孫さんの頭にかぶせてくれたというのだ。

別のおばさんは「これ飲みなさい」と言い、ペットボトルの冷たいお茶をくれた。わざわざ、コンビニまで買いに行って。他にも何人もの人から「暑いから気を付けてね」と声を掛けられたという。

藤城さんは、その時お孫さんが口にした言葉が忘れられないという。
「初めてのアルバイトで見ず知らずの人に親切にしてもらい、お金だけでなく人の心のありがたみを得ることができた。一生忘れない」と。

大学3年になったお孫さんは、コンビニで買い物をするとお釣りを募金箱に入れているという。近所の幼稚園や小学校の子どもたちと遊んであげたりもする。
藤城さんは「あの麦わら帽子のおかげかもしれません。これからも帽子とともに心身の成長を見守って行きたいと思います」と言う。

<中日新聞掲載2012年1月15日>

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