ほろほろ通信『まだ十歳ですよ』志賀内泰弘

去る7月7日、半田市の吉田陽子さん(49)は小学校の個人懇談会へ出掛けた。いつものことながら、少し不安を抱きつつ。というのは、小学5年生の息子さんが広汎性発達障害のため、集団行動が苦手だからだ。感情を伝えたり読んだりすることが難しく、周りの人とのコミュニケーションがはかりにくい。

新任の伊藤正明先生は、開口一番にこうおっしゃった。「頑張ってますよー」。続けて「僕は大輝(ひろき)君のことが大好きです。毎日笑顔で近寄ってきてくれます。かわいらしいじゃないですか」。

この一言だけで安心した。さらに
「クラスのみんなが彼のできないことは助けてくれますよ」とも。
大輝君の机の上には、紙を折って作った小さなごみ箱が置かれてあった。

一つのことに集中すると他のことに目が届かくなってしまい、ゴミが散らかしっぱなしになる。それを知った友達が、すぐに片付けられるようにと作ってくれたのだ。

「みんなと同じことができないことが多くて、友達から責められることがありました」と相談すると、先生は「まだ10歳ですよ。大丈夫です。もし彼を責める子がいたら『君だって完璧な人間じゃないだろ』と教えてやります」。
「でも、片付けができなくて…」と言うと「かっこいいじゃないですか。小さいことを気にしないで」。

そんな見方があるなんて驚いた。先生は最後におっしゃった。「この一年で『こんなこともできないの?』と反対に友達に言えるくらいに成長させましょう」。吉田さんは、先生の大きさを感じ温かな気分で家路に就いたという。

<中日新聞掲載2011年11月20日>

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