ほろほろ通信『思い出のマンションで』志賀内泰弘

岐阜市の高崎裕樹さん(51)は、2年ほど前に奥さんを病気で亡くした。その3カ月後、まだ悲しみが深く残る中、高校生の娘さん、社会人と大学生の息子さんの4人で家族の思い出の地を旅した。15年ほど前に会社の転勤で暮らしたことのある東京や家族旅行で行った御殿場(静岡県)・箱根(神奈川県)へ。

会社の社宅のマンションは多摩川べりにあった。眺めのよい部屋だった。たまたまその部屋に、以前から親しくしている職場の後輩H君が住んでいることがわかった。急ではあったが電話をして、妻が亡くなったこと話すと自分のことのように泣いてくれた。「ぜひ立ち寄ってください」と言われ、訪ねることにした。

最寄りの駅からマンションへの道すがら、懐かしい景色にだんだん当時の記憶がよみがえってきた。マンションに着くと、H君は居間だけでなくすべての部屋を見せてくれた。寝室、子ども部屋、ベランダ。子どもたちと一緒に入ったお風呂も。今も変わらない部屋の空気に昔の生活の残り香を感じたという。

お茶だけで失礼するつもりが、奥さんの手料理までごちそうになり楽しいひとときを過ごした。

帰宅して数日後のこと。H君から一通の便りが届いた。中にはCD-ROMが入っていた。早速パソコンで見てみる。そこに映し出されたのは・・・子どもたちと一緒に遊んだ多摩川河川敷の広場、マンションの一つずつの部屋、ベランダから見える川崎の工場の煙突、家族で出掛けた近くのスーパーマーケットなど、懐かしい風景ばかりだった。

H君のおかげで癒され心が温かくなったという。

<中日新聞掲載2011年09月04日>

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