ほろほろ通信『母の教え「人の出会いを大切に」』志賀内泰弘

豊田市の河野則雄さん(69)は自動車工場に勤めていた。いったん定年退職した後、会社から請われて全国で期間従業員を募集する仕事に就いた。

皮切りは2月の厳寒に函館への出張。次の目的地である室蘭へ行く駅のホームでのこと。後ろから同年配の女性が足早にやってきて「室蘭へ行く特急はどこですか」と聞かれた。発車時刻は迫っている。河野さんも初めてのことで迷っているところだった。

駅員さんを呼びとめて聞き、一緒に電車に乗り込んだ。近くの席に座る。「娘がお産で室蘭まで出掛けるのです」と言われ話が弾んだ。

それから2週間後のこと。またまた同じ函館駅で後ろから声を掛ける人がいた。振り向くと「あの時の人」だった。なんという偶然。同じ人に出会うなどということは人生で初めてのことだった。お互いに笑顔になり心が温かくなったという。思えば先方から凍えるホームで声を掛けられたのがご縁のきっかけだった。

その時、ふと母親の口癖を思い出した。河野さんは小学6年の時に父親を亡くした。以来、母親が兄弟とともに苦労して育ててくれた。そんな母親が、社会に出て生きていく大切なこととして教えてくれたのが「人の出会いは大切にしなさい」だった。

「工場で部下が失敗をした時には『若いうちにはあることだよ』と励ましたり、日頃から積極的に他人にも話し掛けてきました。すると相手の良いところも吸収できます。ピンチのときに助けてくれる人が現れたりもしました。出会いを大切にするのは幸せの第一歩と思います」と河野さんは言う。

<中日新聞掲載2011年08月07日>

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