ほろほろ通信『祖父の気風を見習って』志賀内泰弘

東浦町の新美貞子さん(78)の実家で家を建て替えたときのこと。ほこりだらけの古い木箱が出てきた。中を開けると、古文書が入っている。もらい受けて一つずつ調べていく中で、大学ノートくらいの大きさの一枚の和紙に目が留まった。

「愛知県尾張国知多郡有脇村 金五銭 石川豊作 明治二十九年六月県下津浪の際罹災者救済トシテ頭書ノ通恵興候段殊勝ニ候事 明治三十一年八月一日 宮城県知事従四位勲二等大浦兼武 岩手県知事正五位勲五等末弘直方 青森県知事正五位勲六等河野主一郎」

それは、新美さんのおじいさんが110年以上前に東北地方を襲った津波の被害者のために義援金を送ったことへのお礼状だった。

おじいさんは慶応三(1867)年生まれ。貧しい農家であるにもかかわらず、明治維新の変革期の中「国を思う」気風にあふれた人物だったと聞いていた。他にも日清戦争の際、騎兵隊のために自作の大麦や軍用品を寄付したことへの礼状も出てきた。当時の物価はわからない。五銭は微々たる金額かもしれないが、そんなご先祖のことを思うと誇らしくなったという。

そういえば…と、父親もお寺や神社に事あるごとに寄進していたことを思い出した。「うちも貧しいのに」と言うと「うちは社会に尽くす家風だ」と叱られた。

「でも、空襲や伊勢湾台風で恐怖を体験してきました。東日本大震災の被災者の皆さんのことが人ごとに思えません。祖父や父にはかないませんが、スーパーなどで募金箱を見かけるたびにわずかばかりの金額を入れるようにしています」とおっしゃった。

<中日新聞掲載2011年5月22日>

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