ほろほろ通信『たかがレジ袋…』志賀内泰弘

1年ほど前。津島市の杉浦喜久弓さん(38)が、家族でショッピングモールへ出掛けたときの話。

衣料品店で、当時5歳の息子さんが気分が悪いと言う。昼食の食べ過ぎか何か原因はわからなかったが、吐きそうなそぶり。とっさに「商品を汚してはいけない」と思い慌てて広い通路へと連れ出した。

次の瞬間、倒れこむようにして下を向き戻してしまった。杉浦さんは両手で受け取ったが、床一面に広がる。ハンカチとティッシュ、さらに首に巻いていたスカーフをはずして汚物を拭う。その横を大勢の人が通り過ぎて行くが、人の視線を気にする余裕もない。

そのとき「大丈夫?これ使って」という声に顔を上げた。手にはティッシュとコンビニのレジ袋があった。70代前半くらいのお年だろうか。品のある白髪の女性だった。

「すみません」と言って受け取るといいのよ、私にも孫がいてわかるのよ。今ではみんな大きくなって。だから誰かの世話をしたくなっちゃうの」。

杉浦さんのご主人は2歳の妹の世話に掛かりきり。それを察して、その女性は杉浦さんが手を洗いにトイレへ行っている間、ベンチで息子さんの介護をしてくれた。

戻って来て「何かお礼を」と言うと「またどこかで会いましょう」と言われ、去って行った。

後日、母親にこの話をしたら「私もいざという時のためにかばんにレジ袋を入れておくわ。あなたもそうしなさい」と言われた。まだ同じような場面で人の役に立つ事はないが常備している。

「たかがレジ袋ですが本当に忘れられない親切です」と杉浦さん。

<中日新聞掲載2011年5月1日>

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