ほろほろ通信『背伸びして「チン!」』志賀内泰弘

春日井市の片山亜僖子さん(42)は、今年の5月に娘さんを亡くした。2歳と10ヶ月の短い命だった。生まれた時から寝たきりだった。目も見えないし耳も聞こえない。入退院を繰り返し「だんだん丈夫になってきたね」と言っていた直後に肺炎にかかってしまった。

ずっと横になっていたベビーベッドの布団をはずし、祭壇として使っている。そこに写真を飾り、位牌と線香、ろうそく立てを置き、お菓子や縫いぐるみ、絵本などを供える。9月に1歳になったばかりの妹が、鈴(りん)棒に興味を持った。

最初は、手にしてなめたりしていた。おもちゃ箱に入っていたことも。それが最近では、お鈴を「チン!」と鳴らすことを覚えた。もちろん、その意味はわからない。「チン!」と鳴らしてはニコニコとお母さんを見る。手の届かない奥に置いてみた。

ところが、よちよち歩きができるようになったため、ベッドにつま先立ちになり背を伸ばして鈴棒を手に取る。わが子の成長がうれしくもある。お姉ちゃんは寝たきりだったので、その分よけいに妹の成長が目につく。日々の小さな仕草を見ているだけで、何よりの励みになるという。また、そのおかげで悲しみが和らぎ早く立ち直ることができた。

「今も、夜中にふっと思い出して悲しくなることもあります。でも、優しくほほ笑む写真のお姉ちゃんと寝相の悪い元気な妹を見比べつつ、将来どのようにお姉ちゃんのことを話そうかと考えています。きっと私たちを空の上から見守っていてくれると思います」と片山さんはおっしゃった。

<中日新聞掲載2010年12月19日>

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