ほろほろ通信『デイジー、どうぞお持ち下さい』志賀内泰弘

名古屋市守山区の佐藤ひとみさん(39)の家の近くに、きれいな花の咲く空き地がある。通るたびに目を楽しませてくれるお気に入りの場所だ。お子さん二人と買い物がてら散歩に出掛けたときのこと。

その空き地を通りかかると、咲き誇る花々の中に何かが目に入った。何だろうと思い近づいてみると、スチール製のいすが転がっていた。そして、そこにはこんな看板が…。

「明日5月9日は母の日です。よろしければ白い花(デイジー)、どうぞお持ち下さい」。末尾には土地の所有者らしき人の名字が書かれていた。
 「自分の知り合いだけでなく、見ず知らずの人にまでプレゼントするなんて」

と心が温かくなった。さらによく見ると、いすの上にはひもでつながれた「はさみ」が置かれている。なんとやさしい気遣いだろう。

数日後のこと。中1の息子さんが塾の帰りにその空き地を通りかかると「白い花をお持ち下さい。はさみがいすのところにあります」という看板に代わっていたよ、と報告してくれた。

実は、佐藤さん。デイジーをもらって来なかった。自分は看板の言葉に感動させていただいただけで十分。近所の大勢の子どもたちがお母さんにプレゼントしてくれたらいいなあと思い、切らずに残してきたという。

「息子はきっと思いやりの心を学んだと思います。子の母となった私にはこの看板が何よりのプレゼントでした。花の持ち主さんありがとう」と佐藤さん。

切り取る代わりに携帯電話のカメラに収めておいた写真を、疲れたときに眺めては元気をもらっているという。

<中日新聞掲載 2010年5月30日>

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