ほろほろ通信『返せなかった茶色のブランケット』志賀内泰弘

今年の元日のこと。一宮市の田中千春さん(42)は実家にあいさつに出掛けようと家族四人で車に乗り込んだ。外は雪が積もっていた。しばらく走るとドーンという衝撃。車の後部を横から追突された。後でわかったことだが、脇道から出て来た車が雪でスリップし、ぶつけてしまったのだった。

追突の勢いで田中さん家族の車は横転。いったい何が起きたのかもわからないまま「みんな大丈夫?」と家族の名前を呼ぶ。運転をしていたご主人、そして中二、小五の息子さんたちも無事の様子。しかし真横に倒れておりドアが開けられず身動きさえできない。

そこへ二人の男性がやってきて「大丈夫ですか」と声を掛けドアを開けて救出してくれた。四人が車から出て気が付くと、もうその二人の姿はなかった。道路脇でパトカーを待ったがなかなか来ない。これも後でわかったことだが、雪のために各所で事故が多発したためだった。息子さん二人は車での移動のため薄着をしていて寒さに震えていた。

近くに止まっていた一台の車から年配のご夫婦が降りて来た。「子どもさんたちに掛けてあげて」と茶色のブランケットを差し出し、そのまま走り去ってしまった。今度は一人の男性が近づいて来て「寒いから使って」と使い切りカイロを四つくれた。

「気が動転していて、皆さんがどこの誰かもわかりません。きちんとお礼さえも言えませんでした。全員奇跡的に大けがはありませんでした。本当にありがとうございました」と田中さん。ブランケットは今も大切に預かっているという。

<中日新聞掲載2010年4月18日>

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