『周りの人は自分を写す鏡』|ほろほろ通信 志賀内泰弘

豊田市の酒井梓紗(あずさ)さん(30)は高校生のときにいじめに遭い、その後、精神疾患になってしまった。10年以上も治療を続ける中、体と心に良い食べ物を自分自身で作ることが大切だと気づいた。

そこで、長野県のまごころふれあい農園にインターンシップ(就業体験)として有機農業を学びに行った。

ある日、野菜の袋詰めの仕事をしていたとき、シールの貼り方を間違えてしまった。作業を一緒にしていたみんなのミスだったが「私の責任です」と言うと、社長さんにしかられた。

「自分だけ悲劇のヒロインぶるんじゃない」と。また「何を仮面をかぶっているんだよ、いい子ぶらなくてもいい」とも。いずれも当たっていた。

酒井さんは相手に合せよう、気に入られようとして自分の心を押し殺してしまうところがあった。それを見抜かれた気がしてハッとした。土の作り方、野菜の世話、草取り、収穫などを体験し、充実した毎日だった。

昔は、人に遠慮して我慢ばかりしていたが、徐々に素直になれて、本当に言いたいことが口にできるようにもなった。

自宅に戻ると、同じように朝4時に起きて家事や畑仕事をするようになった。

自分で作った野菜を近所の一人暮らしのおじいさんのところに持って行った。「これ食べてよ」と気安く言うと、受け取ってくれた。以前「食べてください」と丁寧に言った時には断られたのに。

酒井さんは思った。

周りの人は自分を写す鏡だと。こちらが親しく心を開くと相手も心を開いてくれる。その瞬間、酒井さんは病気から立ち直ったことを確信したという。

<中日新聞掲載 2013年9月8日>

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