ほろほろ通信『母の日のサプライズ』志賀内泰弘

4月のある日の夕暮れ。新城市の後藤福代さん(60)が「おばさーん」と言う声に玄関に出てみると、娘さんの友達が立っていた。ピンクのカーネーションを抱えている。
「いつもおいしいご飯をありがとう。これ、気持ちです」と言い、差し出した。園芸農家でカーネーションの出荷のアルバイトをしていて、最終日に買い求めたものだという。

後藤さんには二人の娘さんがいる。二人とも嫁いでしまい少し寂しい日々だ。でも、次女の高校時代の友達がしばしば訪ねてくる。もう15年くらいの付き合いだ。家族同様の仲で、娘さんが嫁いだ後も遊びに来る。悩みを打ち明けてくれることも。

昨年の夏、彼女は勤め先のリストラに遭ってしまった。いくつもの会社の面接を受けたがなかなか決まらない。不採用の通知ばかり見るうちに、人間性までも否定されているような気になった。後藤さんは、そんな彼女に「今はね、ジャンプする時のためにかがんでいる状態だから大丈夫。まず自信を持つことが大切よ」と励ましたという。

後藤さんは22歳で長女を出産した。若かったので、子育てにも心に余裕がなかった。転ばないようにと手を差し伸べてばかりいた。本当はつらいことにも、自分で立ち上がれる力を育てなければならないのに。それに気づいた時から娘の友達にも、自分の子どもと同様に愛情を注ぐようになったそうだ。

「自分がつらいときに感謝の心を忘れない優しい子です。思いやりはサービス業の原点。きっと人の役に立つ仕事に就けるものと信じています」とおっしゃった。

<中日新聞掲載2010年7月4日>

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